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精神科グループホーム視察 報告

令和4年4月16日(土)に『株式会社 れいわホワイトナイトホールディングス 訪問看護ステーションアマテラス』さんにて視察を行いました。

今回のテーマは「新しい医療の形と未来への希望」でした。
テーマをもとに各々自分の立場、視点で話し合いを行いましたので報告いたします。
今回の訪問は、コロナ禍を配慮し、最小限の参加者で構成しました。

精神看護領域教育者の立場:秋田 啓次 氏

今回は、グループホームを運営している株式会社を視察訪問しています。

こちらの株式法人では、精神を病む人のグループホームの運営と訪問看護を実施しています。
精神を病む人を指す呼称では、精神病者、精神障碍者など表現しますが、こちらのグループホームで暮らしている方々への総称は、どちらも当てはまらないと考えます。
ですので、精神を病む人という表現を用いました。その理由は、入院患者では退院することが目標ですし、外来患者では傷病を治すことがその目標となります。 
しかしグループホームという名前の住まいに暮らしている方々を傷病者と呼ぶのがふさわしいかどうか迷い、現実として精神面の治療を受けている方々ですが、暮らしを支援する立場としてこのように表現しました。
すなわち傷病管理ではなく、生活管理を行っているということと考えます。

精神保健医療の在宅促進を考える会である、当精考会の方針である、精神障碍者の地域移行・地域定着に合致していると思うのです。
こちらの株式会社では、医療でないのに看護師が従事しているという医療サイドからみるととても珍しい形態であるのです。
そのようなわけで、私の方から懇願し、関わらせていただいております。
これからの医療の在り方は、コロナ禍により促進された、オンライン診療、訪問診療・訪問看護へシフトしていくのではないかと考えます。

2000年に始まった介護保険では、生活介護という言葉が生まれ、介護の担い手不足の補填のためもありヘルパー2級取得する厚労省からの委託訓練も始まりました。
訪問の使命は孤独死する老人を助けること、精神を患う人への社会的支援、医学の進歩に伴い大人の発達障碍者も増加し、現在ではヤングケアラーの問題など多岐にわたり必要な社会的支援の担い手です。
消費税は社会保障と教育費に充てられるという公約で当初3%から10%に増加したこともあり、教育については奨学金の充実等、その効果があります。
依然続いている少子高齢社会にあっては、なお納税者を増やさなければならない状況もあります。精神を患っている人の人生を取り戻すためにも地域移行し社会参加する。
これは医療だけでは力不足です、あくまでも病院は病気を治すところです。そこから先は株式会社を含めた社会資源に依存して良いと思います。

そこで「生活医療」を提案したいのです。
入院は退院が目的となり、通院は傷病治癒がその目的です。
社会で暮らす人々は、傷病も寛解しているからこそ社会参加でき、社会生活の取り戻すという日常生活が進行中の人々を対象としています。
病気を治すことではなく、人生の主人公としてどうしていきたいか、どうなりたいかという自主性が入ってくるのです。
医療は生活の一部分であり、「健全な生活づくり」が対象を救える意義になります。
そのため人生をあきらめず、「希望を届ける」訪問を展開したいと思います。
そのためにナイチンゲールの名言である「健康づくりの芸術である看護」が社会資源の専門家であるソーシャルワーカーと連携することが必要です。
努力し挑戦できる世界観が希望と共に生活の中に生まれてくるように支援の輪を広げることが将来の医療の在り方になるように活動をしていきたいと思っています。

経営管理者の立場:中尾 氏

本社は、2003年創業、美容事業でスタートしました。そして2019年から福祉事業へ参入しました。
精神及び知的障碍者のグループホームを設立して運営しています。2020年12月に訪問看護事業を立ち上げ、就労支援も立ち上げました。
精神領域の生活基盤の全てをみている会社となりました。24時間ではないが、朝食から夕食までの時間帯を福祉事業部と訪問事業部で生活支援の関わりを持ってフォローしています。

また、保護猫に対する事業として、グループホームでアニマルセラピーも行っています。
生命的交渉感のある支援を展開していますと同時に、少しではありますが、社会貢献を視野に入れた取り組みを考えています。
利用者のみなさんで一緒に暮らす仲間がいるということの意義は大変大きく、広報部の社員とのつながりも良い意味で社会的な刺激となっていると思っています。また傷ついた猫の心もケアされています。

精神看護領域教育者の立場:秋田 氏

美と健康は相関関係にあると思います。美を意識している人は、自ずと生活も整い、衣食住についても考えて行動しているものです。
また、健康を意識すると、自然に心身ともに整い、姿勢が良くなるように日常も正常化していくと考えています。
このように、美と健康は切れない関係にあるため、美容を業とする会社ですが、健康の側面にも関心を寄せ、社会に貢献されているのではないかと思っています。

現在私は、主として在宅医療を展開している医療法人で、学校法人の取得と看護関連の学校設立を業としています。
元々大学教員でしたので、看護教育の3つのポリシーについていろいろ考える機会に恵まれました。いわゆるアドミッションポリシー・カリキュラムポリシー・ディプロマポリシーです。

顧問をしていた慢性期の病院で、絶え間ないナースコール対応に追われた経験をしました。
例えば自殺未遂で入院された患者は、お酢というプラセボで不調が改善するというものでしたから、絶え間ないナースコールに看護要員たちはうんざりしていました。
なんとかならないかと考えると以下のような発想の転換ができました。
自殺未遂の患者がナースコールで呼ぶのは、生きようとしていることになる、これはこの病棟の看護のたまものではないか。
死にたいと考えた患者が生きようとしてナースコールをしてくることは、看護によって患者を肯定的に変化させたのではないかと。
そこで看護の方針を考えました。希望を届ける看護を展開する事とナースコールに感謝できる看護師を育成することです。

就労支援の立場:岡本 氏

グループホーム、訪問看護との連携の重要性については、以下の2点について重要と考えます。
1. 就労・職場定着に生活・医療の安定は非常に重要であること。
2. 一方、疾患や家庭環境などの影響により、まず生活が安定していない、家庭が安心の場になり得ないケースも多い現状があり、社会生活維持のためにもグループホームに象徴される住まい確保は必須の重要課題であると考えています。

次に、多職種連携のニーズについてですが、医療を基盤としていない弊社のような就労系に特化した企業は、生活面や医療面に単独では対処しきれない問題が山積しています。
昨今は多職種連携が重要視され、福祉では連携による報酬加算なども設定されてきたので、医療以外の法人の参入できる環境整備が整ってきた印象があります。
“住みたい所に住む”自由について、就労という人生の方向性を決める岐路で、”住みたい場所に住む”ことを考えた際に、疾患を抱えて一人暮らしを完結することへの不自由さや不安を感じる事が多いことも避けて通れない現実です。
グループホームや訪問看護および介護は、それらを緩和する大きな可能性があり、是非連携したいと痛感しています。

福祉と医療の方向性の違いと、それによる専門家集団でのチーム的な支援について、医療は心身の機能の回復を最優先し、福祉はその人の社会的な幸せを最優先するため、就労・定着という社会生活への移行時に方向性が違うこともあると思います。
医療は保守的にならざるを得ないため、チャレンジングや社会的な希望を抑制されることも多いと思います。
「株式が医療・福祉をやっている」というだけで偏見に遭う事もあると思うのですが、その中でも誠実にやっていく事で、先進的な専門的高みを目指せると考えられます。
そういった集団でチーム支援を行う事で「今」のニーズに応じた支援が出来るのではないかと考えさせられました。

脳神経外科看護の立場:鎌谷 氏

2025年問題によって医療従事者の減少と高齢患者様への対応が医療現場で求められてくると思います。
段階の世代と呼ばれている人々の特徴のひとつとてして、若年からの喫煙習慣のある世代ということが挙がります。そのため肺疾患や、生活習慣病へのリスクが増してくると思います。

一方この世代の人々は、パソコンやスマートフォンが使えるという強みのある高齢者だと思います。
昨今コロナ流行下にて病院ではWeb面会等が増えてきています。
その中で段階世代に対しては、予防の観点からウェアラブルデバイスを用いたスマートヘルスケアや、タブレットを活用したオンライン診療・問診を医療に組み込んで関わることが必要です。
この取り組みが医療現場の人手不足への問題解決への掛橋となると考えているのです。

最新機器を使用する医療現場では、最新機器の使用法の説明用リーフレット作りやスキルを学べる場の提供を他職種と地域に密着して実施しなければいけないと思います。
又、医療従事者が使用していく上での標準化や共通評価の必要性も考慮し、例えば点数化が求められると思います。
段階世代以外の世代に関しては、70歳以上の方には「まだまだ自分は大丈夫」と考えている方もいました。
その方々に対して、リハビリやデイサービスに参加してもらうこと、又、自尊心を傷付けない関わりが必要になってくると思います。

精神看護領域教育者の立場:秋田 氏

これからの医療の在り方は、深夜開業や休日開業等もありますが、在宅医療やオンラインクリニックが主流となるのではないでしょうか。
そのため、視力の減退のある高齢者にも対応できるICT環境の整備が喫緊の課題化と思います。

例えば、テレビのオンライン診療用のチャンネルがある。
初診時に得たシリアルナンバーを入力してインストールすると、そのクリニックのオンラインスイッチがチャンネルに登録される等々、新しい発想も必要ですね。
デイケアのカラオケ大会などのレクレーションもテレビで参加できると対象が拡大するでしょう。
財源は医療費の分配、特に人件費に係る費用の分配で賄えばよいのではないでしょうか。

希望パスを考案したいと思い考えました。
この時点から未来の自分のライフワークを可視化できる目標スケールと情報パネルです。
3段階に分けた進歩する目標を入力すれば、必要な情報がインターネットを介して収集できるというシステムです。
入院治療をしていないグループホームの住人への支援は、医療の一端を担うだけでなく、生活全般いわゆるその人のライフにかかわることから避けられません。
その時に将来の目標支援ができれば、希望を届けることにつながるのではないかと考えたのです。

医療ソーシャルワークの立場:橘田 氏

福祉医療は保守的であり、企業に比べて後手になっています。
そして、前例がなければなかなか進めない現状があります。
しかしコロナ禍が後押しして、福祉施設にもWEB面会や見学会など新しいチャレンジが求められてきました。
一足遅れている福祉関係も、1番初めに前例を作る必要があると思います。出る杭も突き抜けたら打たれない(笑)。

医療主導型の我が国の福祉は、慣例に従い、医療からの指示を守ることに注力し、無意識に職員目線になっているのが現場であるため、利用者目線や利用者個々の立場で考える方向にシフトチェンジすることも大事です。
利用者は、デイサービスを仕事の場、憩いの場、学校など様々な思いで参加しています。出勤や出席すると言う義務感から参加している方もあります。
認知症があるからではなく、発想の転換で、同じことを何回も言ってくれることに感謝すること。
そして、気持ちを伝える、教育も指導ではなく伝えることがテーマでもあると思って対応に心がけています。

社会企業の立場:山下 氏

希望を「見せる」ことは重要です。
見えないだけに、何かの形で希望の在り方や追いかけ方などを見せることは可能だと思います。
弊社は、ホームページ作成・維持・管理を主として業にしている会社組織ですが、数字を追いかけるだけではなく、仲間がいて、仕事があって、希望があってという組織に成長することが必要だと感じます。
そのために地元の人と切磋琢磨して勉強会など企画し、地元で共生しています。

また、会社組織は教育組織であるとも思っています。会社組織を土壌として成長し、自律していくことがやりがいに繋がるのではないでしょうか。
組織内において相互に成長するためには、正しい褒め方をすることが重要です。
褒めることを求められるのはおかしいと思います。

中小企業は連携が大切です、自分が勝つだけではいけないと思います。
企業の風土により育てられ、自分が企業と共に変わってきている、自分でも変えてきている、という感覚が必要だと思っています。

訪問現場の立場:佐藤 氏

看護師をして30年となります、その間、在宅、病院、施設と看護体験をしました。
在宅医療では人を大事にしています。
どんな看護師がどんな人に出会うかによってそこから先の人生が変わってしまうこともあります。
直接話して、温度を感じて頂くことが重要です。
医療現場では見過ごされがちな生活を視点とした部分や健康な部分を看護師は見つけることができます。その分、責任も重大です。

病院や施設と異なり、周りに医師や先輩看護師や他の看護師がいません。
すべて自身で判断しなければなりませんが、自立して対象を思いやることができ、そのことはやりがいになっています。
在宅医療では、看護の質が重要であり、看護師の質が求められる。医療、介護、精神と幅広くスキルや知識が求められます。

私達、在宅看護師は、少しでも長く在宅生活が安全にすこやかに暮らせる事を目標に看護を行う事が大切です。
また、家族様との関わりが重要で、在宅看護師はコミュニケーションスキルも必要です。ご利用者様の人生の最後にも関わらせてもらえる責任のある立場であると思っています。

精神看護領域教育者の立場:秋田 氏

新しいことは進んでいく。
しかも少年のころの未来図も本当に現実となっているほど速い速度で、進むというより変化をしています。ついていくのに息が切れそうなほどの変化です。

一番変化が緩徐である医療というヒューマンサービスにおいてもめまぐるしく変化しています。
そのような中でどのようにして希望を届けるのか、どのような希望を届けるのか、形のない希望という概念をどのように扱えるのか。
例えば希望パスにより可視化して励みにする等を考え進歩を促進していかなければヒューマンサービスの限界に達しかねません。(希望パスはこちら

現代社会の在り方が作り出したといっても過言ではない「うつ」は、脳機能として希望を作れないという病気であり、将来・未来が肯定できない又は現在を喜ぶことができず楽しめない、楽しむ脳の機能が働かないと仮定すると、希望を届ける看護師や介護職員の存在は、その対象が傷病者のみならず何よりも重要です。
これからの精考会の役割は、偏見や危険視思想の払しょくだけではなく、希望を届けられるような人材への教育及び病める人々への情報提供なども必要であると痛感致しました。

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